建築設備定期検査とは
建築設備定期検査とは一定の規模(面積)、または不特定多数の方々が出入りする建物について建物の所有者、又は管理者が検査資格者(建築設備検査員、一級建築士又は二級建築士)に依頼をして、建築設備(換気設備、排煙設備、非常用の照明装置及び給水設備及び排水設備)を毎年検査して出先機関(センター・協会・土木事務所等)または、役所(建築指導課)に定期的に提出を行い、報告済書を発行することです。
報告書の提出先
定期検査を行った後に建築設備定期検査・報告書を建築設備検査員、一級建築士又は二級建築士が下記の役所の出先機関(センター・協会・土木事務所等)または、役所(建築指導課)に提出いたします。ただし、関東地区においても、提出先が、都道府県で異なりますので、注意が必要です。
- 東京都一般財団法人日本建築設備・昇降機センター(新橋)
- 埼玉県財団法人埼玉県建築住宅安全協会(さいたま市)
- 神奈川県一般財団法人神奈川県建築安全協会(横浜市)
- 神奈川県横浜市役所建築局建築審査課(横浜市)
- 神奈川県川崎市役所まちづくり局指導部建築監察課(川崎市)
- 千葉県・茨城県・群馬県につきましては市役所建築指導課・所轄土木事務所
実施時期
関東地方においては、東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県は毎年実施、茨城県・群馬県は2年~3年に一度の実施であり、かなり注意が必要です。(建築物の用途・規模により実施年度が違いますので、建築指導課または行政庁に確認してから実施しております。)
検査報告書の提出月については、都道府県で違います。
建築設備定期検査が必要な建物
建築設備定期検査を必要とする、建物としては、不特定多数が出入りする建物(映画館・劇場・集会所・病院・ホテル・旅館・百貨店・飲食店・図書館・美術館・ボーリング場等のスポーツ施設・物品販売を営む店舗等)が設備検査を行う必要があります。
また、事務所・老人福祉施設・学校・共同住宅(マンション)も一般的には必要ですが、都道府県の条例により規制が違いますので注意が必要です。
建築設備定期検査「対象」
建築物を検査・調査する対象となる建物は、用途(建物を使用する目的)又は、規模(面積)及び階数で決まります。
各都道府県で建築設備定期検査対象物件が異なりますので、注意が必要です。
細かく調べたい場合は、各都道府県のホームページで「定期報告」を検索して、「定期報告が対象となる建築物」を調べてみてください。
関東各地域の建築設備定期検査の注意事項
平成28年6月の法改正に伴い、検査対象物件に変更がございます。1都3県につきましては、下記に一部抜粋致します。詳細につきましては、弊社にお問い合わせいただくか、各県・特定行政庁にお問い合わせ下さい。東京都平成28年6月の法改正以降も従来と同様です。
千葉県共同住宅(マンション等)・事務所においては検査対象外となりました。
また他の用途において、機械排煙設備・別置型非常用照明装置が設置されていない場合も検査対象外となりました。埼玉県基本的には川口市管轄以外は従来と同様です。
共同住宅(マンション等)においては、6階以上に階があるものが検査対象です。
また、物品販売を営む店舗(スーパー等)は、2階以上で床面積が1500m2を超えるもので、平屋(1階建て)は検査対象外です。神奈川県共同住宅(マンション等)・事務所においては検査対象外となりました。
平屋(1階建て)については、一部対象外の地域がございます。
横浜市・川崎市等の特定行政庁につきましては、特段の定め(細則)がある為、別途お問い合わせが必要です。
建築設備定期検査「基準」
建築設備定期検査の検査項目として、大きく4項目があります。
建築設備定期検査はこの4項目を一定の基準に従い、事故が起きないように検査するものです。
簡単に解りやすくどのような検査なのか、下記で説明しています。
換気設備の検査
飲食店等ではガス設備を使用していることが多く、大量の酸素を必要としています。また、ガスが燃焼した際には、排気ガス(二酸化炭素・炭酸ガス等)が発生いたします。室内に新鮮な空気を入れて排気ガスを外部に出す、これが「換気設備」です。検査時に多いのは給気口(換気スリーブ等)が塞れたり、換気フード(レンジフード)の油汚れによる換気不足が挙げられます。
また、送風機・排風機フアン関係においての故障は、FD(ファイヤーダンパー)の温度フューズの破損、ファンのベルトの破損、ファン(シロッコファン)の汚れによる風量不足等がございます。これらの故障(不具合)を放置して置くと、ガス器具が不完全燃焼をおこす可能性があり、一酸化炭素(CO)中毒につながります。一酸化炭素(CO)は、人体にとって非常に有害で、多く吸い込むと死亡事故につながります。
これらの危険から生命を守り、室内(作業室等)の住環境を快適に守るのが、換気設備検査です。
換気設備の検査ポイント
- 換気風量が十分にあるか?
- レンジフードのフィルターに汚れはないか?
- ダンパー関係はキチンと空いているか?
- 送風機・排風機の機能は正常であるか?
排煙設備の検査
機械排煙設備が設置されている建物は、事務所・一定規模以上の共同住宅・ホテル・物販店舗・飲食店・病院等あらゆる建物に機械排煙設備が設置されています。特に地下街で不特定多数の出入りする建物、または一定規模以上の面積と階数がある建物について設置されています。
火災が発生すると煙や有毒ガスが発生します。その煙などを安全に速やかに、外に排出して人の命を守るのが排煙設備です。排煙設備には、機械排煙設備及び自然排煙設備があり、ここでは機械排煙設備を中心に説明させていただきます。
排煙設備の検査方法または排煙設備の設置している基準について述べさせていただきます。排煙機本体の検査は、運転時の最大風量(排煙機の能力)が出ているのかを調べます。居室の排煙口(なるべく多くの排煙口を開けます)を開けて、排煙機本体の能力が十分に出ているのか風量測定を行い、排煙機能力の判定をします。(風量を測定する際には、必ず排煙機本体の能力を名板等で確認します。)これまで検査した経験上、排煙機本体の能力は、定格の105~110%位でているのが通例でした。それを基に設備検査しています。
各部屋・廊下・エレベーター室(附室)等に設置されている、排煙口について説明させていただきます。排煙口は排煙面積(500m2以下)に設けられており、煙を排煙面積以上に外に放出しているかを調べます。
排煙設備の検査ポイント
- 機械排煙機 本体の風量は定格どおりあるか?
- 排煙口の風量は定格どおりあるか?
- 手動開閉装置(オペレーター)で排煙口は開くか?
また、物品で手動開閉装置が塞がれていないか?
給水設備及び排水設備の検査
生活するうえで絶対に必要なのは水です。その水を確保して排水するのが給水設備及び排水設備です。 一般には公共上水道より水の供給を受けて受水槽で水を貯めて、揚水ポンプで高置水槽に上げた水の落差を利用して居室(住居等・お部屋)に水を供給されています。近年では維持費を軽減させる為、高置水槽を設けないポンプ直送方式・圧力タンク方式などを取り入れるビル・マンション等が多くなって来ています。近年では共同住宅・マンション等では、タンクを一切設けない増圧直結給水方式が多く見受けられます。
検査項目として、受水槽(貯水タンク)・高置水槽(給水タンク)のマンホールを空けて水質を目視点検します。また水槽の材質がFRPの為、紫外線を通すことにより水槽内に藻の発生が無いか調べます。水槽内には、水を自動的に給水する装置のボールタップや浮子が有り、正常に作動するか調べます。ただし、1人で点検する際には、マンホール内より体を乗り出すため、水槽内に落ちないように十分注意して検査を行っています。
水槽の付属設備としては、配管より虫が入らないように網(防虫網)が破れていないか調べます。また、排水した水が逆流しないように空間を(吐水口空間)を設けていることを確認いたします。
給水設備及び排水設備の検査ポイント
- 内容量が10m3未満の貯水槽は、内部清掃の義務が無いために、長い年月、清掃しないで使用していることがありますので、そのような小規模の建物ほど丁寧な点検を実施しております。
- 地下貯水槽のコンクリート水槽(躯体利用の水槽)においては、汚れが激しい為、丁寧な点検が必要です。また他の水槽と隣り合わせになっている為、湧水・汚水が流入していないか調べます。
非常照明装置の検査
地震などの災害時に停電した際、出口方向がわからず暗闇の中、ケガやパニックになり死亡事故につながることがあります。停電時、暗闇で逃げる方向を照らし、パニックにならいように一定の明るさを確保して、避難を助ける目的で設けられているのが非常照明装置です。
一般的に見られる非常灯の種類は、白熱灯(ハロゲン)と蛍光灯があり、居室の中は白熱灯を使用していることが多く見受けられます。蛍光灯の多くは階段で使用されています。(現在ではL E D電球も普及してきています。)予備とする電源は、別置式(電気室の中に数十台ある、大きなビル等・店舗・病院等で使用されている)と内蔵式(照明器具・本体に付属されているもの)あります。
検査方法はいずれも30分の点灯の後に照度(光の明るさ)を測る方法です。非常照明灯より一番離れている場所で、かつ一番暗い場所で測定するのが良いと考えます。 また、30分間の点灯の方法としては、内蔵式で白熱灯の場合は、分電盤の非常照明回路を切り、30分経過した後に測定する方法があります。また、点検ひもをクリップで止めて30分固定して経過後に測定することも一つの方法と考えます。内蔵式蛍光灯の場合は分電盤での点灯操作が難しく、点検ひもの操作を行い、白熱灯と同じ要領で検査を行なっております。
照度の判定の基準は蓄電池で30分点灯後に、白熱灯が(1ルクス以上)です。蛍光灯は(2ルクス以上)です。 照度の測定方法は深夜・夜間の測定は理想的で照度測定には最適ですが、昼間の照度測定に関して、記載させていただきます。
一般的な作業形態の昼間測定ですが、太陽光の明かりがあり照度測定には最適とは言い難いですが、昼間に測定する場合は差し引き方法(最初に非常照明装置を点灯しないで測定して、後に非常照明装置を点灯してその差を差し引きして算出します。)、他には黒い紙筒を用意して、夜間状況を作る方法等があるが、建築設備定期検査を行うビルに合わせて実施しております。
非常照明装置の検査ポイント
- 一般電源より非常灯は、配線されていませんか?(必ず非常回路より電源を取っているか調べます)
- 内蔵式蓄電池は7年~10年位で寿命がきますので、30分点灯後も照度を保っていますか?
- 改装の際、非常灯が撤去されていませんか?
関東各地域の建築設備定期検査「基準」
地方自治体によってルールが異なっている為、関東地方における検査4項目が検査の対象となっているかを記載させていただきます。こちらの検査項目は、報告書を作成する上で、これまでの弊社の経験及び失敗を基に作成いたしましたので、ご参考になれば幸いです。
- 基本的な考え方としましては、建築設備定期検査について、平成28年6月以降、国土交通省より検査対象項目は機械排煙機と別置型の非常用照明装置のみとなりました。給水設備及び排水設備は検査対象外になります。
- 東京都につきましては、検査4項目全てが検査対象です。提出時期に注意して提出いたします。
- 東京都以外の都道府県は、建築設備定期検査の検査項目について特異性がありますので、検査する上で要注意が必要です。
- 共同住宅(マンション等)・事務所においては検査対象外となりました。ただし、老人福祉施設(老人ホーム)は検査対象となります。
- 物販店舗(スーパー等)の1階建て(平屋)は、検査対象外です。
- 神奈川県の点検項目は、地域や延べ床面積及び用途で検査対象が異なりますので、注意が必要です。
- 神奈川県(特定行政庁でない21市町村)・横浜市・川崎市・茅ヶ崎市は、神奈川県建築安全協会又は、行政庁(市役所の担当部署)の双方で受付できます。
- 建築設備定期検査(設備検査)は毎年検査・提出が必要です。
- 埼玉県埼玉県の定期報告は、点検項目やその用途についても国土交通省の指針とほぼ同様で、東京都と酷似しています。しかしながら検査対象となる建物の面積が違うので、注意が必要です。
- 受付については、平成29年4月より埼玉県建築住宅安全協会へ郵送での受付に変更となりました。
- 共同住宅(マンション等)においては、6階以上に階があるものが検査対象です。
- 事務所においては対象の床面積が2,000㎡を超え、かつ6階以上に階があるものが検査対象となります。
- 物販店舗(スーパー等)の1階建て(平屋)は、検査対象外です。
建築設備定期検査「報告書」
※毎年、東京都の建築設備定期検査報告書は変更されます。
「東京都」の報告書の内容項目を下記表に掲載しましたので、ご参考にされてください
※「千葉県」の報告書については年度別実施状況表は必要ございません。
また、平成28年6月の法改正に伴い、県内の報告書式が統一となりました。機械排煙設備・別置型非常用照明装置が設置されている場合は報告対象となります。
※「神奈川県」の報告書は、給水設備及び排水設備は報告対象外になります。
火器使用室及び無窓居室の検査報告は一部の地域で対象となりましたが、地域・用途及び延べ床面積報告対象でない物件もある為、注意が必要です。
※「埼玉県」の報告書は、基本的には東京都と同様となります。
受付については、平成29年4月より埼玉県建築住宅安全協会へ郵送での受付に変更となりました。
「東京」の報告書の内容項目
NO. | 報告書等 |
01 | 定期報告書 第一面~第三面 |
02 | 建築物概要書 |
03 | 換気設備検査結果表 |
04 | 排煙設備検査結果表 |
05 | 非常照明設備検査結果表 |
06 | 給水設備及び排水設備検査結果表 |
07 | 無窓居室の換気が設けられた居室の換気状況評価表(換気設備を設けるべき調理室等を除く) |
08 | 換気設備を設けるべき調理室等の換気風量測定表 |
09 | 排煙風量測定記録表 |
10 | 非常用の照明装置の照度測定表 |
11 | 関係写真 |
12 | 3年までの間に1回行う検査項目の年度別実施状況表(大臣項目) |
13 | 定期検査報告概要書 |
建築設備定期検査「料金」
- 料金につきましては「お見積もり請求」もしくは直接ご連絡いただきますよう、よろしくお願い致します。
見積もり条件
- ※ 見積もりをご希望の際は、過去の報告書・図面(電気図面・空調図面・排煙機系統図面)・確認済証等の資料が必要となります。
- 必ず御用意をお願い致します。
- ※ 検査対象物件に排煙機が設置されている場合は、その台数・排煙口の個数により金額が異なります。
- また、火器使用室・無窓居室も室数でも金額が異なります。必ず事前にお問い合わせ下さい。
- ※ 別置型の非常灯の点灯試験を行う場合は、試験スイッチが必要となります。必ずご用意下さい。
- ※ 物件用途・面積・階数・物件数等により金額が異なります。必ず事前にお問い合わせ下さい。
- ※ 深夜・早朝の検査・調査の場合も金額が異なります。必ず事前にお問い合わせ下さい。
- ※ その他、ご質問等ございましたら、お気軽にお問合せ下さい。